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欧州・北米へのプラント移設や新設について

投稿日: 2020年12月10日

海外へプラントを新設/移設するには?

 

近年、納品を早めるためや輸送コストを抑えるために、欧州/アジア/アメリカに工場の新設や移設をお考えのメーカー様も多いのではないでしょうか。実際、当社にも工場の新設・移設について相談いただくことが少なくありません。中には、日本や海外で稼働中の設備全体や一部をそのまま移設する計画もあります。

 

そこで今回は欧州とアメリカへの工場移設について解説いたします。

結論から言ってしまうと、設備を欧州/アメリカ向けに設計していない場合、その設備や機器をそのまま新設や移設することは出来ません。新品/中古に例外なく、輸出国の法令が適用され、対応が必要になります。今回のコラムでは、製品単体ではなく、プラント全体を考えるときに外せないポイントを解説していきます。

 

アメリカ向けのプラント

 

まずアメリカ向けプラントからご説明いたします。

アメリカでの工場の責任者は設備メーカーではなく工場の運営会社(所有者)です。何か事故が起きた場合、プラントの運営会社が罰せられます。そのため設備メーカーには仕様書で「アメリカ又は○○州で使用できること」、と明記されます。この仕様書の要求がされた場合、メーカーは下記項目を確認する必要が御座います。

 

・使用される州

・認証機関は指定されているか

・認証の種類

 

上記によって対応方法が変わります。まず州ですが、アメリカは州によって異なる法律があり州法が優先されます。認証機関もアメリカにしかない認証機関もあれば、日本に出先がある認証機関など様々ですし、認証費用も認証機関により異なります。そして認証の種類は2つ存在します。

(詳しくはコラムの「NRTL認証 アメリカ・カナダ」をご覧ください)

 

つまり、下記の4点を確認することでやっと、ゴール(稼働まで)の道筋が立てられます。

  1. 州法の確認
  2. 認証機関に州と規格の相談
  3. 選定規格通りに設計又は設計変更
  4. 認証試験(日本or現地)

 

アメリカは認証制度を用いているため、一方ではCEマークよりも明確でわかりやすいです。しかし、日本では馴染みのないUL規格やNFPA規格を用いるため、設計や認証機関への相談に苦慮してしまい、なかなかプロジェクト管理が難しいという面もあります。はじめてのアメリカ新設/移設の場合には、専門家へサポートを依頼することをお勧めいたします。

 

アメリカ新設/移設で必要な専門家とは

 

専門家の選定方法は該当の認証機関と協業経験がある、又は認証機関に直接コンタクトを取れるコンサルティング会社をお勧めします。なぜなら、アメリカ新設/移設では認証機関とのやりとりが欠かせません。その中で、各認証機関の特性を理解し進め方について任せられなければ、専門家へ依頼する意味がないからです。

 

当社は主要の認証機関とはアライアンス契約をしておりますので、日本国内での設計支援~現地試験の手配まで幅広く調整可能です。日本国内での支援では、アメリカ規格の専門家による事前構造確認や規格適合のコンサルティング業務が可能です。

 

次に欧州向けプラントをご説明いたします。

 

欧州向けのプラント

 

欧州はアメリカと違い、設備の安全性などはメーカーとインテグレータの責任です。

ユーザーは原則責任を負いません。そのため、知らないまま納品・設置してしまうとメーカーとインテグレータは意図せず法律違反を犯してしまう場合があります。

 

まずはインテグレータについて説明を加えておきます。

 

欧州プラントで外せないインテグレータ(Integrator)とは

 

・統合生産システムを設計,提供,製造及び組み立てる実体であり、保護方策,制御インタフェース,及び制御システムの接続を含み、安全に関して担当するもの

 

インテグレータは、製造者である場合もあれば、アセンブラ、エンジニアリング会社又はユーザーとなり得る可能性がある。つまり、インテグレータは設備単体ではなく、ラインなど複合生産システムの責任を負う会社の事です。

 

インテグレータの決定方法

 

そこでメーカーとインテグレータが法律を犯さないために下記フローで進めてください。

 

  1. 設備全体の評価指令/規格の特定
  2. 設備個々の評価指令/規格の特定
  3. 指令/規格通りの設計/製造
  4. 設備個々の評価
  5. 設備全体の評価

 

多くのプラント新設/移設計画では、1と5が抜けてしまっている場合が多いのです。そのため、個々の設備はCEマークに適合していても設備全体としては法令や整合規格に不適合で、結果法律違反になってしまうということが発生してしまします。

 

欧州プラント新設/移設での不適合事例

 

具体的な不適合事例を挙げますと、

 

・安全柵が設置されていない

・作業スペースが十分に確保されていない

・インターロック/ライトカーテンなどが設備全体を考慮していないので、リスクを低減できていない

・設備間の繋がり部分が評価されていない(抜けている)

・電気安全試験が個々の設備で実施している

・EMC試験が個々の設備で実施している

・設備全体としてCEマークの認証を宣言していない

 

などです。

 

これら一つでも該当してしまうと法律違反となります。冒頭部分でお伝えした通り、すべての設備をCEマーク品で構成しているから大丈夫ということではないのです。プラント新設/移設の際には、CEマーク適合品を用いて新たな装置(設備全体)を作ことになるとお考え下さい。

 

欧州新設/移設で必要な専門家とは

 

欧州への新設/移設では、専門家の入るタイミングでプロジェクト全体のコスト・期間が大きく異なります。欧州輸出ではどれだけ早く、「インテグレータの決定方法」でお話した内容を明確にできるかが勝負だと言っても過言ではありません。

 

移設の計画が出たタイミングでプラント全体を評価できるコンサルティング会社に相談されることをお勧めいたします。専門家の選定方法は、移設先(現地)の試験所を手配できる、プラント全体の評価実績がある、この2点を踏まえ検討ください。

 

当社は欧州域内であれば試験の手配も出来ますし、日本から試験官の派遣も可能です。またプラント全体の評価実績は様々な分野でいくつも御座います。

 

プラント新設/移設のご相談で必要な資料

 

ご相談いただく場合には下記資料をご準備ください。これらは仕向地がどこでも共通です。

 

【必須資料】

・構成設備リスト

・フロー図(ワークの流れがわかる資料)

・配置図

 

【補足資料】

・設備の類似機

・取扱説明書

・類似設備の動画や静止画

 

早く着手するほど、設計/製造コストは下げることが可能です。

まずは、「お問合せフォーム」の無料相談にてお気軽にご相談ください。

 

 

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