有害物質の使用制限(RoHS 2)指令2011/65/EUとは
有害物質の使用制限(RoHS 2)指令2011/65/EUは、特定有害物質を電気・電子機器(EEE)から排除することを目的としています。RoHSは「ローズ」と呼ばれていますが、「Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment」の略称で、日本語では「電気・電子機器における特定有害物質の使用制限」となります。
そもそもRoHS指令は、2006年7月1日に施行されましたが、それ以前から電気・電子機器の廃棄やリサイクルに対する法律がありました。しかし、定めた廃棄方法はなかなか守られず、EU域内の環境汚染は進んでいきました。そこで欧州委員会は、この電気・電子機器における有害物質をより制限するため、最終的に埋立てや焼却処分される段階ではなく、生産段階に有害物質が使用されていない電気・電子機器にしようとRoHS指令を制定したのです。このように人や環境に影響を与えないように、EUで販売される電気・電子機器の有害物質を非含有とさせることを目的としてこのRoHS指令は制定されました。
RoHS指令の要求事項
RoHS指令での要求事項は、最終製品を構成する「すべての部品および組立品に対して、最大許容値以上の規制物質を含んでいないこと」です。欧州経済地域(EEA)の市場に置かれるすべての新しい電気・電子機器(EEE)に対し、カドミウム、鉛、水銀、六価クロム、PBB(ポリ臭化ビフェニル)、PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)、4物質のフタル酸エステルフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジイソブチルの10物質が最大許容値以上含まれてしまうことを規制しています。最終製品は多くの場合、部品および組立品から成り立っているため、製造者はすべての部品および組立品に対して「含んでいないことの証明する体制およびエビデンスを含めた技術文書の作成」を行わなければならなりません。
RoHS指令の適用範囲
定格電圧でAC(交流)1,000V以下、またはDC(直流)1,500V以下の機器であり、RoHS指令2のANNEXⅠに定める11カテゴリーすべてが対象となります。
カテゴリー選定を行う方法について
この製品の分類に関する欧州委員会からの公式な方法は出されていないため製造者によって選定する必要があります。そこで、欧州整合法令の1つであるWEEE指令を参考にこのカテゴリー選定を行う方法をご紹介いたします。RoHS指令はもともと、廃電気・電子機器(WEEE)指令の適用範囲から抜き出されたものです。WEEE指令は、RoHS指令のカテゴリー1~10と同じ10種の幅広い製品カテゴリーを指定しています。WEEE指令のANNEXⅡにこのカテゴリー1~10に該当する電気・電子機器の代表製品リストがあるので、その代表製品を参考にしていただければ、自社製品の対象カテゴリーの選定も行いやすくなるでしょう。ただし、これは公式な選定方法ではありませんので、あくまで参考として活用ください。
使用制限対象物質について
使用制限対象物質の10種類である、カドミウム、鉛、水銀、六価クロム、PBB(ポリ臭化ビフェニル)、PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)、4物質のフタル酸エステルフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジイソブチルは、使用が制限されています。この計10物質はそれぞれ最大許容濃度が定められ、最大許容濃度を超える量を含む製品は欧州域内へ上市ができません。最大許容濃度の値は、均質材料重量に対してカドミウムは0.01%、その他の9物質は0.1%と規定されています。
製造者は、サプライヤーからの非含有のエビデンスおよび部品データを含むテクニカルファイル(技術文書)を編纂して、電気・電子機器(EEE)の輸出から10年間は、保管しなければなりません。このテクニカルファイルの編纂には、RoHS指令の整合規格であるEN 63000が用いられます。
RoHS指令の除外規定について
RoHS指令には、除外規定があります。これは製造者が、どうしても禁止する物質を使わないと生産ができなくなってしまうと欧州委員会が認識するものに限定されています。
RoHS指令における適用除外用途
RoHS指令には、いくつかの特定の免除項目が規定されています。なぜなら、欧州委員会はRoHS指令の適用範囲が広いからです。またRoHS指令の適用範囲に影響する製品があまりにも多いため、禁止された物質のうちのいくつかを使用しないで、製品を設計・製造することが技術的に難しいかもしれないことを認識しているからです。
RoHS指令の適用除外については、ANNEXⅢとⅣに記載されています。物質ごとに用途、使用量の制限、有効期間が細かく定められています。RoHS2の施行時に、カテゴリー1~7、10の適用除外用途は特に指定されない限り、施行日から最大5年と定められました。
RoHS2の施行日は2011年7月21日なので、2016年7月21日には適用除外の期限を迎えたことになります。しかし、大半のものの使用期限の延長申請が行われたため、使用期限が変更になっています。延長申請されていれば、期限を超えていても、正式決定までは引き続き使用可能となります。RoHS2から対象製品となったカテゴリー8と9(医療機器、監視制御機器)は、適用除外に関しては一部、ANNEX Ⅳで管理することになりました。特に指定がなければ、施行日より最大7年と定められています。カテゴリー11は2019年7月22日から5年間、最大適用除外期限は2024年7月21日となっています。適用除外の有効期間の延長を希望する場合には18ヶ月以上前から延長申請が必要となります。
電気・電子機器(EEE)の製造者は、規制10物質が最大許容値以上含まれていないことを確認してCEマーキングするだけでなく、EU適合宣言書と適合を証明する書類であるテクニカルファイル(TCF)を編纂しなければなりません。
RoHS指令の適用範囲内において、自社の製品が指令の要求を満たすことを確実にする責任を負います。さらに、製品を市場投入する行為は「製品が該当指令の要求事項に適合している」ということを製造者自らが宣言していることになります。そのため、製造者が必要なテクニカルファイル(技術文書)を作成し、維持することで製品の法令順守を証明することは必要不可欠です。
RoHS指令適合の証明方法
RoHS指令に適合していることを証明するためには、すべての部品、製品からなる材料、組立品などがRoHS指令に準拠していることを製造者自らが証明しなければなりません。
すべての部品や材料を分析試験するには、高い検査費用がかかってしまうので現実的ではありません。そこで、それを避けるためには、RoHS指令の整合規格であるEN 63000にて定められた方法で確認することができます。EN 63000では、供給される部品や材料がRoHS指令に準拠しているという証明書を部品や材料の供給先から確実に入手することになります。
この証明書(エビデンス)は、RoHSにおける含有リスクを見積り決定します。テクニカルファイル(技術文書)には、すべてのエビデンスおよび部品データが含まれており、最終輸出から10年間は保管しなければなりません。もし国の規制当局から、製品の適合性に対する疑義向けられた場合、最初に確認するものがテクニカルファイル(TCF)です。
日本国内向けのRoHS対応
RoHS指令の適合の証として、電気・電子機器にCEマーキングすることは、2013年7月から有効になっています。RoHS指令の規制物質の最大許容値を越えることは許されていません。したがって、RoHS指令からの適用範囲から外れていても、部品や組立品の製造者、つまりRoHSのサプライヤー側となる企業は、RoHSの対応が必要になります。
現在、RoHS指令への対応は法律的要求だけでなく、企業間の取引の条件の一つとして、重視する企業が増えてきています。
従って、自社でEUへの輸出をしていなくても、最終製品を製造するメーカーへ納品する場合には、RoHSの一部として、RoHSの対応が必要になります。このRoHS指令への対応はあらゆる企業の課題となっています。
RoHS指令適合を示すためには
RoHS指令へ適切に対応していなかったために、大きな商談を失注してしまうという事態も起こっています。しかし、中途半端な対応をしてRoHS対応品としてHPに掲載し、CEマーキングをすることは大変危険です。
単に「規制10物質を使っていません」・「サプライヤーから非含有宣言書をもらっています」と宣言するだけではRoHS指令への対応は不十分です。RoHS指令の要求事項をしっかりと理解し、その証拠となるテクニカルファイルを編纂してはじめて、RoHS指令に適合していることをお客さんや取引先に示せるようになるのです。
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