生産工場やラインを新設/移設するには?

現地調達の必要性や輸送コストを抑えるために、欧州/北米/アジアに工場を新設/移設したいとの相談が増えております。

中には、日本や海外で稼働中の設備をそのまま移設したいとの相談も御座います。

そこで今回は欧州とアメリカへの工場新設/移設について解説いたします。

結論から申し上げますと、設備を欧州/アメリカ向けに設計していない場合は既存設備をそのまま使用することが出来ません。

新品/中古に例外なく、使用先の法律が適用されます。

そこで生産工場全体や生産ラインの移設/新設を考えるときに外せないポイントを解説していきます。

アメリカ向け

まずアメリカ向けからご説明いたします。

アメリカでの工場の責任者は設備メーカーではなく工場の運営会社(所有者)です。何か事故が起きた場合、工場の運営会社が罰せられます。そのため設備メーカーには仕様書で「アメリカ全土又は○○州で使用できること」、と明記されます。この様な仕様要求がされた場合、メーカーは下記項目を確認する必要が御座います。

・使用される州

・認証機関は指定されているか

・認証の種類

上記によって対応方法が変わります。

簡単ですが理由を説明いたします。

まず州ですが、アメリカは州によって異なる法律があり、連邦法に特別な規定がない場合は州法が優先されます。

また認証機関も複数あり得意分野もバラバラですし、費用も機関により異なります。

そして認証の種類は2つ存在します。

そこで下記4点を確認することでやっと、ゴール(稼働まで)の道筋が立てられます。

  1. 州法の確認
  2. 認証機関の選定と規格の相談
  3. 選定規格通りに設計又は設計変更
  4. 認証試験(日本or現地)

アメリカは認証制度を採用しているため、ゴールは明確です。

しかし、日本では馴染みのないUL規格やNFPA規格を用いるため、設計や認証機関への相談に苦慮してしまい、なかなかプロジェクト管理が難しいという面もあります。

はじめてのアメリカ新設/移設の場合には、専門家に相談することをお勧めいたします。

アメリカ新設/移設で必要な専門家とは

相談する専門家は認証機関と協業の経験がある、又は認証機関に直接コンタクトを取れるかで判断することをお勧めいたします。

なぜなら、アメリカ新設/移設では認証機関とのやりとりが欠かせません。

進めていく中で認証機関の特性を理解し、メーカとの間を取り持てないと専門家に依頼する意味がないからです。

当社は主要の認証機関とはアライアンス契約をしておりますので、日本国内での設計支援~現地試験の手配まで幅広く対応することが可能です。

日本国内での支援では、アメリカ規格に基づく事前構造確認や規格適合のコンサルティング支援の提供が可能です。

次に欧州向けについてご説明いたします。

欧州向け

欧州はアメリカと違い、設備の安全性などはメーカーとインテグレータの責任です。

ユーザーは原則責任を負いません。そのため、知らないまま納品・設置してしまうとメーカーとインテグレータは意図せず法律違反を犯してしまう場合があります。

まずはインテグレータについて説明を加えておきます。

欧州で外せないインテグレータ(Integrator)とは

・統合生産システムを設計,提供,製造及び組み立てる実体であり、保護方策,制御インタフェース,及び制御システムの接続を含み、安全に関して担当するもの

インテグレータは、製造者である場合もあれば、アセンブリする会社、エンジニアリング会社又はユーザがなり得る。つまり、インテグレータは設備単体ではなく、ラインなど複合生産システムの責任を負う会社の事です。

インテグレータの役割

そこでメーカーとインテグレータが法律を犯さないために下記フローで進めてください。

  1. 設備全体としての安全基準の決定
  2. 設備個々の評価指令/規格の特定
  3. 指令/規格通りの設計/製造
  4. 設備個々の評価
  5. 設備全体の評価

多くのプラント新設/移設計画では、1と5が抜けてしまっている場合が多いです。

そのため、個々の設備はCEマークに適合していても設備全体としては法令や整合規格に不適合で、結果法律違反になってしまうということが発生してしまします。

欧州プラント新設/移設での不適合事例

具体的な不適合事例を挙げますと、

・安全柵が設置されていない

・作業スペースが十分に確保されていない

・インターロック/ライトカーテンなどが設備全体を考慮していないので、リスクを低減できていない

・設備間の繋がり部分が評価されていない(抜けている)

・電気安全試験が個々の設備で実施している

・EMC試験が個々の設備で実施している

・設備全体としてCEマークの認証を宣言していない

などです。

これら一つでも該当してしまうと法律違反となります。冒頭部分でお伝えした通り、すべての設備をCEマーク品で構成しているから大丈夫ということではないのです。生産設備を新設/移設する際には、CEマーク適合品を用いて新たな装置(設備全体)を作ことになるとお考え下さい。

欧州新設/移設で必要な専門家とは

欧州への新設/移設では、専門家の入るタイミングでプロジェクト全体のコスト・期間が大きく異なります。欧州輸出ではどれだけ早く、「インテグレータの役割」でお話した内容を明確にできるかが勝負だと言っても過言ではありません。

移設の計画が出たタイミングでプラント全体を評価できるコンサルティング会社に相談することをお勧めいたします。専門家の選定方法は、移設先(現地)の試験所を手配できる、複合設備の評価実績がある、この2点だけは必ず加味してご検討ください。

当社は欧州域内のオンサイト試験も手配出来ますし、日本から試験官を派遣することも可能です。

また様々な分野での工場移設/新設の支援実績があります。

生産工場新設/移設のご相談で必要な資料

ご相談いただく場合には下記資料をご準備ください。

これらは使用先がどちらでも共通です。

【必須資料】

・構成設備リスト

・フロー図(ワークの流れがわかる資料)

・配置図

【補足資料】

・設備の類似機

・取扱説明書

・類似設備の動画や静止画

早く着手するほど、設計/製造コストを下げることが可能です。

まずは、無料相談にてお気軽にご相談ください。