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低電圧指令(LVD)2014/35/EUとは

投稿日: 2020年4月29日

低電圧指令(LVD)2014/35/EUの「要約」

LVDは、ニューアプローチ指令の中では最も古く、電気機器の使用による感電や火災など電気安全を規制している指令です。LVDは、AC(交流) 50V~1000V、DC(直流) 75V~1500Vの電圧定格で使用するために設計されたすべての電気機器に適用されます。電圧定格とは、機器の内部に生じ得る電圧ではなく、入出力の電圧を意味します。

 

したがって、電池で動作する機器などでこの電圧定格範囲外のものは、LVDの適用範囲外です。しかし、付属の充電器やACアダプタなどはLVDの適用範囲に入ります。

 

以下の機器は、他の指令で評価されるためLVDの適用範囲から除外されます。

 

  • 爆発可能性雰囲気中で使用する電気機器
  • 放射線学および医学目的のための電気機器
  • 昇降機用の電気部品
  • 電力メータ

 

また、以下もLVDの適用範囲から除外されます。

 

  • 家庭用プラグおよびソケット
  • 電気フェンスコントローラ
  • 加盟国が参加している国際機関によって作成された安全条項に適合している、船舶、航空機または鉄道で使用される特殊な電気機器。

 

低電圧指令の適用範囲に入る製品と入らない製品の例

LVD Administrative Cooperation Working Group (LVD ADCO)が発行している「GUIDELINES ON THE APPLICATION OF DIRECTIVE 2014/35/EU」の付属書Ⅱには、「低電圧指令の適用範囲に入る製品と入らない製品の例」が掲載されています。
LVD ADCOはEU加盟各国によって運営されている独立したワーキンググループです。このグループは、国内市場監視当局との「情報の協力と交換」のために設立されたフォーラムです。

付属書Ⅱの日本語訳

 

「部品」はLVDの適用範囲に入るのか?

LVDの適用範囲には他の機器に組込まれることを意図した電気機器と直接使用されることを意図した電気機器の両方が含まれます。
しかし、他の電気機器に組込まれる部品として使用されるように設計、製造された製品は、どのような形で最終製品に組込まれるかによって決まります。
また部品の適用除外の範囲を誤解してはならず、ランプやスター夕、ヒューズ、家庭用スイッチ、電気的据付要素などにまで拡大してはなりません。
これらは他の電気機器と一緒に使用され、それ自体がLVDの適用範囲だとみなされます。

 

LVDには「保護要件」と「管理要件」がある

LVDは保護要件、管理要件の両方の側面を持っています。

 

管理要件は以下になります。

 

  • CEマークを製品に貼付すること
  • 適合宣言書(DoC)を完成させること
  • テクニカルファイル(TCF)を作成すること

保護要件は、一般的に様々な規格への製品の適合性を評価することによって満たされます。LVDへの準拠は、通知機関/認証機関(ノーティファイド・ボディ)を必要とせず、全ての製品が自己適合宣言を行うことが可能です。

 

低電圧指令(LVD)2014/35/EUの必須要求事項

特定の電圧限度内で使用するために設計された電気機器に関する安全目標

 

  1. 一般条件
    (a)電気機器が安全かつ意図する用途で使用されることを保証する電気機器の本質的特性、承認、順守を示すものとしてCEマーキングしなければならない。それが不可能な場合は、通知を添付しなければならない。
    (b)ブランド名または商標は明確に電気機器に表示しなければならない。それが不可能な場合は、包装に印刷しなければならない。
    (c)電気機器は、その構成部品と併せて、安全かつ適切に組み立ておよび接続できることを保証するように製造しなければならない。
    (d)電気機器は、機器が意図する用途で使用され、適切に管理されているならば、本付属書Ⅰのポイント2および3に規定されている危険に対する保護が確保されていることを保証するように、設計・製造しなければならない。
  2. 電気機器から生じる危険に対する保護
    技術的な性質の測定は、以下のことを保証するために、ポイント1に従って規定しなければならない。
    (a)人や家畜が、直接的または間接的な接触によって生じうる物理的な傷害、またはその他の損傷から十分に保護されている。
    (b)危険が生じうる温度、アークまたは放射線が発生しない。
    (c)人、家畜、および財産が、経験によって明らかにされている、電気機器に起因する非電気的な危険から十分に保護されている。
    (d)絶縁が予見可能な条件に適していなければならない。
  3. 外部からの影響によって生じうる危険に対する電気機器の保護
    技術的措置は、以下のことを保証するために、ポイント1に従って定められる。
    (a)電気機器が、人・家畜および財産が危険にさらされないような方法で、予見される機械的要素を満たしている。
    (b)電気機器が、人・家畜および財産が危険にさらされないような方法で、予見される環境条件において非機械的な影響に耐えるものである。
    (c)電気機器が予見可能な過負荷の状態において、人・家畜および財産を危険にさらさない。

 

製造者がやるべきこと

基本的に製造者がやるべきことは非常にシンプルです。まず、機器を安全(規格の要件通り)に設計/製造します。次に、機器に製造元(商標)の名前とアドレス(手紙が届く住所)を明記し、その機器をいつでも安全に使用することができるように、取扱説明書を用意します。(現地語対応が必須)

 

そして、下記原文(日訳)の通り文書を作成する必要があります。

 

  • テクニカルファイルを編纂する必要があります。
    テクニカルファイルは対象製品がどのように、低電圧指令2014/35/EUの要求事項を満たすものなのかを証明できるものでなければなりません。一般的には、テクニカルファイルの内容は、製品情報、取扱説明書のコピー、各種図面、テストレポート、そして適用した整合規格の評価レポートで構成されます。
  • 品質管理手順。
    低電圧指令2014/35/EUでは、すべての完成品が指令の必須要求事項に適合していることを要求しています。製造者は適切な品質管理手順を持たなくてはなりません(例:ISO9001など)
  • EC適合宣言書にサインをします。
    EC適合宣言書とは、製造者の製品の識別情報が記載され、その製品が指令の要求事項に適合していることを裏付けることができる手順が記載された文書のことです。
  • 製品もしくはパッケージや取扱説明書にCEマーキングのロゴを貼付しなければなりません。

 

低電圧指令2014/35/EUの整合規格

「機器そのものの保護要件」は非常にシンプルであるため、実際にどのように電気機器を設計したら良いのかが分かりません。そこで、低電圧指令(LVD)2014/35/EUでは、整合規格のリストを参照するように示しています。
整合規格は製造者、製品の購入者、税関職員、そして裁判所が“安全”を確認する基準として使用されます。整合規格は下記のリンクから参照可能です。

 

【規格リスト】はこちら

 

低電圧指令(LVD)2014/35/EUの自己適合宣言

低電圧指令2014/35/EUでは、製品にCEマーキングするためには、必ずしも資格を有する第三者による評価や認定は必要ないとされています。
しかし製造者自身で確認・評価できない場合は、コンサルタントに支援を要請することを推奨します。

 

電気機器が適用を受ける可能性のある他の指令

低電圧指令2014/35/EUの適用を受ける多くの電気機器は同時に、EMC指令2014/30/EU、RoHS指令2011/65/EC、WEEE指令、そしてEUP指令の適用を受ける可能性があります。

 

しかし下記の指令に対象となる場合、その指令内で電気安全に対する要求があるため、LVDは適用除外となります。

 

  • ATEX指令2014/34/EU
  • RE指令2014/53/EU
  • MDD/MDR 93/42/EEC(2017/745)
  • MD 2006/42/EC

 

法律の施行と罰則規定(イギリスの例)

  • 低電圧指令2014/35/EUはイギリスでは、Low Voltage Electrical Equipment (Safety) Regulations 1994. に基づいて施行されています。
  • 法律の運用は消費者用製品についてはTrading Standards Institute、産業用製品についてはHealth and Safety Executive によって行われています。
  • 法令違反による罰則の最高刑は3ヶ月の禁固・懲役および/または5000ポンドになります。 通常は、製造業者はリコールまたは法令違反品を交換することが要求されます。 法律の執行当局は、対象製品が法律に準拠していないことの合理的な証拠を持っている場合、製品の販売を一時停止または禁止する権限を持っています。

 

さらに、法令違反が他の安全関連法規に抵触する可能性があり(例えば、安全衛生労働法、または消費者保護法)、実際に課される罰則は、より大きくなる可能性があります。

 

以上から適切な規格の選定/設計段階からの規格への適合が必須になります。
自社での対応も不可能ではありませんが、アウトソーシングする方が、時間も社内コストも削減できるケースが多々あります。LVDへの該当可否も含めお気軽にお問い合わせください。

 

【お問合せ】はこちら

 

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