投稿日: 2020年5月1日
昨今、自動車や再生可能エネルギー事業を筆頭に日系企業の欧州プラント設立が進んでおります。CEマークの要求は、設備から建物に至るまで多岐に渡り、設計段階での理解・落とし込みが重要となります。これから欧州進出をご検討されている皆様向けに、プラントのCEマーキングの進め方や留意点を解説いたします。
まずこちらの記事における「プラント」の定義ですが、工場の建屋ではなく工場に設置される設備の事とします。また「設備」の定義ですが、いくつもの産業機械が連結され形成された生産/製造ラインとします。
欧州に日本の生産設備を移転や新規建設される場合、企業様の対応でよく見られるのが、全てのサプライヤー(機械メーカー)にCEマークのお願いをするだけで、完成図書も日本と同様であるケースです。結論から言うと、これだけでは欧州へ輸出することはできません。つまり、NG(CEマーク不適合)です。
CEマークの原則は、最終製品(製造ライン)として宣言することです。
製品を組み合わせるとき、それぞれが該当法令に適合している場合でも、必ずしも全体として、その最終製品がEU整合法令に適合しているというわけではないのです。つまり、構成部品がCEマーキングされているという事実が、自動的に最終製品の適合を保証するものではないということです。こちらは欧州公式ガイド(Blue Guide)にも明確に書かれています。
よく誤解されている「CE+CE+CE=CE」の式は、成り立たないのです。
まず工作機械、コンベア、ロボットなどが一体化されている生産/製造ラインをイメージしてください。(工程ごとにワークが加工、自動搬送され最終的にアウトプットが出来上がる生産/製造ラインです)
ラインで各装置がきちんとCEマーク対応している場合、必ず非常停止ボタンがあります。
しかし、装置メーカーが自社で製造した装置に対してのみ安全を考慮した場合、当然ですが
非常停止ボタンを押しても、その装置しか止まりません。つまり、ライン上の他の設備は動き続けてしまいます。
このように、各装置メーカーが最終製品(ライン)を認識・考慮した設計でない状態で装置は、果たして「安全」でしょうか。
「安全」とは使用者が取扱説明書通りに使用した場合危険に晒されない状態を意味します。
もし特定のプレス機やロボットだけ止まって、コンベアが動いていたならばワークは流れ続けるため最終製品(ライン)としては停止の状態になりません。
これではCEマークおよび機械指令の原則である「使用者の安全確保」を出来ていないため、最終製品(ライン) はCEマーク不適合となってしまいます。これが、欧州プラント建設・設備のCEマークの落とし穴なのです。前項の繰り返しになりますが、「構成部品がCEマーキングされているという事実が、自動的に最終製品の適合を保証するものではない」ということを、正しく認識する必要があります。誤った認識のまま輸出してしまうと、いざ欧州で設備を稼働させたタイミングで不適合が見つかり、適合できるまで設計変更や再試験に数か月~1年間を費やしてしまうリスクがあるのです。
※「安全」については別記事の「リスクアセスメント」にて解説しておりますのでご覧ください。
装置と装置のインターフェイス
装置と装置のインターフェイス部分は評価されているでしょうか。
これも各メーカーが最終製品(ライン)を前提に設計/製造/評価していないと抜けてしまう危ないポイントです。こちらも非常停止スイッチと同様に、装置単体ごとのCEマーキングだけでは、評価が抜け落ちてしまっているため、最終製品(ライン)としては、CEマーク不適合です。
評価レポート
また電気安全試験やEMC試験も単体の装置と最終製品(ライン)では負荷が全く違います。そのため、各装置の試験レポートだけでは、最終製品(ライン)の適合のエビデンスにはなりえず、技術文書が不足してしまい、CEマーク不適合となってしまいます。
いずれも欧州プラント建設・設備のCEマーキングでよくあるケースですが、プラントのCEマーク適合はきちんとした手順と評価を行えば、効率よく進めることが出来ます。
それでは、その適合手順を見ていきましょう。
Step1.最終製品(ライン)の責任者を決める
Step2.責任者が各サプライヤーにどの様な装置を製造してもらうか決める
Step3.最終製品(ライン)が組み上がった状態で評価する
Step4.技術文書をまとめる
以上となります。
「あれ?当たり前のことでは?」と思われた方は注意してください。手順は当たり前ですが、各Stepにおける内容が重要なのです。
各装置メーカー(サプライヤー)に装置を発注する前に、上記のStep1.と2.を実施する必要があります。これらが、設備のCEマーク適合で最も大切なポイントとなります。実は、設備のCEマーキングで重要なのは、評価や技術文書の編纂ではなく、この発注前の「要件定義」なのです。これらが抜けた場合、設計/製造/評価の段階で確実に手戻りが発生いたします。逆に言えば、この「要件定義」さえクリアできれば、どれだけ大きな設備やプラントもスムーズに進めることができます。
したがって、必ず構想段階からすべての該当法令に対する準備を行いましょう。
弊社は、Step1.責任者の決定からStep4.技術文書作成までを一貫して支援可能なコンサルティング会社です。そして、いくつものプラントのCE評価の実績がある唯一の会社でもあります。設備の仕様/対象国/CE経験の有無など、貴社に合わせたベストな適合手順をコーディネーターが1から丁寧にご案内いたします。プラント移設/新規建設を予定されている方は、まずは無料相談にてお気軽にご相談ください。